歴史上の27人の哲学者たちの思想を現代の哲学者が語る
コロナ禍により、自粛モードとなった今年の正月。
私もステイホームで読書三昧の正月でした。
そんな中、柏書房から出版されている「哲学と対決する!」という本を読みました。
今までは、仏教や禅の本をよく読んでいましたが、最近では西洋の哲学にも興味が湧いてきて、ソクラテスやニーチェの本もよく読むようになりました。
そんな中で手に取った1冊がこの本です。
この本は、インターネットラジオのポッドキャストで配信された「フィロソフィー・バイツ」というインタビュー番組の内容を書籍化したものです。
歴史上の偉大な27人の哲学者たちの思想について、現代に活躍する哲学者たちにインタビューをして語り合おうという番組です。
ポッドキャストの番組制作はBBCのドキュメンタリー制作者、ディヴィッド・エドモンズ、インタビュアーはオープン大学の哲学上級講師のナイジェル・ウォーバートン。本の訳者は作家・翻訳家の菅靖彦さんです。
インタビュアーと現代哲学者との智の対決!
現代の哲学者たちに、インタビュアーが「あなたのお気に入りの哲学者は誰ですか?」という質問を投げかけ、彼らのお気に入りの哲学者について語ってもらうという内容で本書は進められています。
インタビューを受ける哲学者の好みや思考が色濃く出たコメントをされていて、しかもインタビュアーのナイジェルさんが、鋭い質問をズバズバと現代哲学者に投げかけてインタビュアーが答えていく。
書籍のタイトルのとおり、インタビュアーと現代哲学者との智の対決といった感じで進んでいきます。
取り上げられている歴史上の哲学者は以下の27人です。
半分ぐらいは名前だけは聞いたことがありますが、まったく知らない哲学者の名前もあります。
- ソクラテス
- プラトン
- アリストテレス
- トマス・アクィナス
- ニッコロ・マキャベリ
- ミシェル・ド・モンテーニュ
- ルネ・デカルト
- バールーフ・デ・スピノザ
- ジョン・ロック
- ジョージ・バークリー
- ディヴィッド・ヒューム
- アダム・スミス
- ジャン=ジャック・ルソー
- エドマンド・バーク
- イマヌエル・カント
- G・W・F・ヘーゲル
- ジョン・スチュアート・ミル
- セーレン・キルケゴール
- フリードリヒ・ニーチェ
- ヘンリー・シジウィック
- プラグマティスト
- ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン
- フランク・ラムゼイ
- ジャン=ポール・サルトル
- フリードリヒ・ハイエク
- ジョン・ロールズ
- ジャック・デリダ
このインタビュー番組では、現代哲学者たちのお気に入り投票の結果も公表しています。
その結果、インタビューサンプルの20%を獲得し、最も人気があったのは18世紀に活躍したスコットランド人のディヴィッド・ヒュームだったそうです。
ソクラテス、プラトン、アリストテレス、ニーチェなど、誰でも名前だけは知っている哲学者を押さえて堂々の1位はディヴィッド・ヒュームでした。正直私はこの名前すら知りませんした。
私は、経済学にも興味があり今まで読んだ書籍からアダム・スミスが個人的には好きな哲学者です。スミスはどちらかというと著書「国富論」名言「見えざる手」はご存じの方も多く、経済学者としてのほうが有名でしょう。
アダム・スミスの章を読んでみると、スミスはヒュームと親友だったんですね。スミスの道徳情操論(道徳感情論)はヒュームからも影響を受けていたようです。
こんなふうに、歴史上の哲人どうしが関係性を持ち影響されてそれぞれの思想が出来上がっているというような人間模様的なドラマも垣間見ることができます。
哲学の栄養が詰まった試食品的な入門書
番組制作者でありインタビュアーのお二人は、この本の取り扱い方をこのように伝えています。
大学で学問として学ぶ哲学とは違い、私たち素人が知的なテイスティングメニューとして考えてもらいたい。哲学的な栄養が詰まった試食品になってくれれば幸いである。
よくある哲学書は(たとえ入門書とされていても)難解で理解に及ばず途中で挫折することも多いのですが、この本はインタビュー形式になっているということもあり、比較的読みやすくそれぞれの歴史上の著名哲学者の特徴がよくわかります。
そして、
また、インタビュアーの鋭い質問に対して、現代哲学者の面々が「おっと!そう来るか!」と不意を突かれたように答えていく様子が表現されていて、しかも、現代哲学者の思い入れもあり、読んでいて面白く最後まで読めました。
この本は哲学の入門書としては最もおすすめの1冊です。ぜひ手に取ってみてください!
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